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雪のあの日。雲が見守る今日。

by C

京都の冬は寒い。東京とは違って雪が降っていた。

沢山の足跡が着いた白い道を歩く。

ローファーに融けた雪が滲んで、タイツの下の足に寒さが伝わる。

もうほとんど着る事の無い高校の制服を着て、新幹線で京都に向かった。

瞳に浮かばなかった涙を心に溜めて、やるせない哀しみとこれまでに貰った愛情全てを抱えて向かった。

「この制服、入学してもう3年経とうとしてるのに。直接見せられなかったな。」

「大学に合格したことも、東京でいろんな大きなことをしてきたことも、直接言えなかったな。」

後悔が募る。上から振り続ける雪と同じ速度で。

明るい報告が出来たときに、大好きな人がいる、大切な場所に帰ろうと決めていた。のに。

「結局、伝えられなかったな。」

私が生を受けてから、今までもらってきた沢山の愛情は、抱えきれないほど大きかった。

大きな愛情のおかげで、

大きな挑戦にも立ち向かえた。

失敗しても立ち上がれた。

逃げても前を向けた。

沢山の期待を寄せて、沢山のエールを送ってくれた。

なのに、私には何もできなかった。私は弱かった。

ぐるぐると走馬灯のように、思い出が頭に積もっていく。

一歩一歩、思い出の地に踏み入れる度に、思い出が溢れていく。

笑顔しか見えない思い出が。

そうやって思い返すのに精一杯で、立ち尽くしていた。

もう年季が入った制服と、黒いタイツ。雪の冷たさが残るローファー。

わけもわからないまま、真っ白な頭の中で、棺を見送った。

白い髪の毛、優しい顔で眠る、大好きな人は、優しい色合いのお花に包まれて、雲になった。

送り出したあと、ポッカリと大好きな人の姿が抜け落ちた違和感を感じた。

でも、その違和感も日常に溶け込んでいくんだ。

時は流れる。記憶は留まる。

平穏な日常、一つ、また一つと、新しい何かを知り、感じ、受ける毎日。

大学で学ぶ傍ら、文章を書く仕事をはじめた。

京都に向かう日に入社予定だったところで。

言葉を紡ぐことで、前を向いて生きよう。と決めた。

私が書いた手紙が好きだと笑って、部屋に飾る姿が脳裏に浮かぶ。

そんな生活を繰り返して、3ヶ月。

仕事で、大好きな人との思い出が詰まった、大切な場所について、書いた。

昔の淡い記憶と、優しい思い出を思い返しては、きゅっと口角が上がった。

「ようやく、良い報告できるね。」

雪が降っていたあの日に旅立ったあの人は、柔らかい顔でのぼっていった私のおじいちゃんは、雲になった。

あの淡く優しい記憶を媒介して、私たちを見守ってくれている。

揺蕩う雲を眺めては、今日も言葉を紡ぐことで、前を向いて生きようと思う。

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